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第8回 「くつ下」

私が医学生時代のことです。最終学年の6年になると臨床実習が始まります。内科、小児科、外科など全ての科を1年で回り、患者さんの診察や手術を実際に見せてもらい、今まで医学書や講義で学んできたことを患者さん自身から学び、医療者としての役割やマナーを身に着けます。

小児科実習のときです。私が担当したのは、神経難病に罹患している3歳の雄太君(仮名)。病気のために自分で呼吸ができないので人工呼吸器につながれていましたが、意識ははっきりしていて呼びかけると嬉しそうに微笑むのがとてもかわいらしい子供でした。

ところが担当して数日目、雄太君は亡くなってしまいます。その後、家族の了解を得て雄太君の病気を理解するため病理解剖をすることとなり、雄太君の遺体は解剖室に運ばれます。学生の私も見学をすることになりました。

解剖をみるのは気が引けると思うかもしれませんが、医学生にとっては貴重な機会です。病理医が雄太君の身体にメスを入れてから終わるまで目をそらすことなく冷静に観察しました。雄太君の解剖は神経難病を理解する貴重な機会となったのです。

解剖は型通りに終了。その後は身体を綺麗にしてから服を着せ、ご両親のもとに帰します。ところが、雄太君の足にかわいらしい靴下をはかせたのを見た瞬間から、雄太君を直視できなくなってしまいました。悲しくて仕方がないのです。必死になって涙をこらえたのを記憶しています。冷静になることはできませんでした。

病室での雄太君の笑顔、解剖の様子、そしてかわいらしいくつ下、半ズボン。30年近くたった今でも忘れることはできません。

私は子供がすきなので医学部入学時は小児科医を志していたのですが、このことで小児科医になることは無理だなと思いました。子供が好きなことと、小児医療を行うことは別なのです。けれども、解剖終了後の遺体をみて動揺してしまう自分にも驚きました。なぜなら、医学部では3年時に人体解剖実習があり、1年の半分以上は遺体に接しており、遺体を見ることに抵抗がなかったからです。しかし、その当時の私は、遺体と人間の死が直結していなかったようです。そして、6年になり人の死を経験することで大きなショックを受けたのだと思います。さらにそれが小さな子供であったことから強烈な印象として残ったのでしょう。

皆様も子供さんを送り出す経験を何度もしていると思います。心中はいかがでしょうか。

 

埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科 大西秀樹

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