私の心に残ったお葬式<3>
私の心に残った、残り続けているお葬式は親友の葬儀です。
約15年前に子供の頃から青春時代を共に過ごした親友が交通事故で亡くなりました。
突然の訃報を聞き、半信半疑のまま故人と対面。そこからの2日間は涙が止まらない日々を過ごしました。対面後、故人の両親から友人を代表して弔辞(お別れの詞)をお願いしたいと依頼があり、自身の心情としては断りたい気持ちでしたが、最後の供養をと思い引き受けました。
葬儀社に勤め、喪家の担い手となり日々を過ごしていた自分は、場慣れしているから大丈夫という自信を持ったまま葬儀当日を迎えました。
しかし会場に入り、祭壇を見上げ遺影写真が視界に入った瞬間、記憶が飛んでしまったようなのです。後で周りから聞くと「立派な弔辞だったよ」と話を聞くが、自分自身は記憶がなく断片的な思い出としてしか残っていないのです。
極度の悲しみは記憶さえもかき消してしまうという体験で、大切な人との別れが周りの人にどう影響を与え、それぞれがどのような思いを持っているのかを、少し理解出来たような気がしました。
また、供養産業で日々を過ごす者として「死」に対して慣れや慢心さが自分をどれだけダメにしているのかを痛感し、仕事と私生活との両立の大切さを学びました。
このような経験から、心のこもった記憶に残る葬儀が良しとされがちな昨今ではありますが、葬儀社に勤める私は、自分と故人がしっかり向き合えたにも拘らず記憶に残っていない、悲しみをしっかり吐き出せたこの葬儀が、今となっては1番心に残ったお葬式と言えます。
故人のご両親と、最前列に友人席を準備してもらい、お別れ場を提供して頂いた会館スタッフの方々に感謝し、今度は自分が提供する側として恩返しをするという気持ちで日々の業務を行っています。
- 更新日時:2018年11月19日|カテゴリー:ブログ