おはぎをお供え
東京都庁の眼下に広がる新宿中央公園では、
8月初旬の強い日差しの中、
凛と背筋を伸ばした真っ赤な彼岸花が早々と咲き誇っていました。
まもなく秋のお彼岸ですね。
高齢者がいるご実家への帰省を、
今年は自粛している方もたくさんいらっしゃると思います。
そんな状況だからこそ、
命の大切さや家族のつながりに想いを馳せて、
せめてお墓参りに行きたいと願う方が増えているそうです。
そこで注目を集めていると耳にしたのが、
リモートでのお墓参りをサポートしてくれる「墓参り代行業者」のサービス。
長距離の移動を伴うお墓参りを断念せざるを得ない人のために、
代わりに墓地へと出向き、掃除をして、花を手向け、
最後はスマートフォンのビデオ通話を利用して、
手を合わせる時間をつくってくれるんですって。
これも新しい生活様式のひとつなのでしょう。
リモートでの法事をお願いできるお寺も増えているようですし、
葬儀に参列することができない人たちのために、
映像配信でお見送りができるサービスなども始まっています。
また直接触れ合える日が訪れるまで、
今は形式に捉われず、
できることに目を向けていくしかないですね。
…というわけで、私もできることをひとまず試してみました。
まずは、昨年の春以来ご無沙汰している田舎のお寺の風景を検索!
Googleマップのストリートビュー機能を駆使したら、
なんと祖父母が眠る納骨堂の入り口までたどり着きました。
東京から鹿児島まで、直線距離にしておよそ1,000km。
それが一瞬にして、手の届きそうなところまで…。
改めて、技術の進歩に感謝です。
画面越しに思わず手を合わせてみると、
納骨堂のひんやりとした静けさと、
お線香の香りが蘇ってきました。
そして、忘れてはいけないものを思い出したんです!
それは、料理名人だった今は亡き大伯母が、
大量にこしらえてくれていた「おはぎ」です。
お墓参りのついでに立ち寄るたびに、
「いくつでも食べなさい」と振舞ってくれました。
その愛情が詰まった優しい甘さは、
お墓参りとセットになって記憶に埋め込まれています。
そうそう!
大伯母はいつだって「おはぎ」ではなく「ぼたもち」と呼んでいましたが、
この「ぼたもち」と「おはぎ」の違い、ご存知ですか?
漢字で書くと「牡丹餅」と「お萩」となります。
どちらももち米を小豆で包んだ同じ食べものですが、
春に咲く牡丹の花に由来することから、
春のお彼岸には「ぼたもち」、
秋の咲く萩の花に由来することから、
秋のお彼岸には「おはぎ」と呼んでお供えするようになったんだとか。
ちなみに「お彼岸」とは、
「春分の日」と「秋分の日」の中日にした、前後7日間のことです。
太陽が真東から昇って真西に沈む「春分の日」と「秋分の日」は、
亡くなった人がいる「あの世=彼岸」と最も近くなる日だと云われています。
代々、命をつないでくれたご先祖に近づける日。
今年は自宅でじっくりおはぎ作りに挑戦してみようと決めました。
果たして、大伯母のあの味に近づくことができるでしょうか…。
おはぎが上手く作れるようになった暁には、
親戚中にふるまって、また皆でワイワイガヤガヤ…、
先に逝ってしまった人たちを揃って偲びたいものです。
そんな日が一日も早く訪れることを願いながら、
今のうちに腕を磨いておきたいと思います。
- 更新日時:2020年09月17日|カテゴリー:ブログ