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連載:葬送と仏教を考える──変わる檀家制度

お寺と檀家のアンバランスな関係

 多くのお寺は、檀家という人たちに支えられて運営しています。檀家とは何かというのはちょっと難しいところもあるのですが、ひと言で言えば、専属的にそのお寺で葬儀や仏事を行う家のことを言います。また、檀家になっているお寺のことを、檀家側からは菩提寺(ぼだいじ)と呼びます。檀家は、菩提寺の境内にお墓を持っていて、お葬式は菩提寺の住職にお願いすることになります。
 この関係性を檀家制度と言いますが、過去の悪しき制度として批判されることが少なくありません。批判の背景には、お寺が檀家に寄付を強制したとか、高額のお布施を要求したとか、様々な理由があるようです。檀家を辞める時に、離檀料としてお金を要求されたという話を聞くこともあります。
 共通しているのは、お寺側が強い立場にあり、その立場にたった発言や行動が、檀家側の納得の範囲を超えているということです。

風通しが良くなるお寺

 この檀家制度ですが実は近年、少しずつ変化の兆しが見えています。
 それは、お寺の立場が極端に強い制度をおかしいと感じる人が、一般の人だけでなく、仏教側にも増え始めていることにあります。またお寺と檀家の対等でない関係性が、通用しない時代にもなっていることもあります。
 以前は、本堂などを建て直す時に、檀家一軒あたりいくら、と割り当てがあるのが当たり前でしたが、近年は、そうした割り当てや強制を辞めるお寺が大多数となっています。寄付が無くなったわけではありませんが、個々の自由意思に委ねられるお寺が増えています。
 離檀料の要求も、無くなったわけではありませんが、それを行わないお寺が多くなっています。
 ひと昔前に比べたら、お寺もだいぶ、風通しが良くなっているのです。
 その背景には、僧侶の意識が変わってきていることがあります。以前から続いている慣習をそのまま無批判に続けるのではなく、現代社会にあわせて考えようとする僧侶が増えています。住職も世代交代が進んでいて、柔軟にものごとを考える人が増えています。
 こうした変化は、表だって目立つ変化ではありませんが、お寺のあり方としては、とても大きな変化であります。

地域コミュニティの変化がお寺を変えていく

 そもそも檀家とお寺の関係性というのは、地域コミュニティとお寺の関係性でもありました。
 例えば、お布施の金額なども、地域コミュニティであるムラ社会の中で決められていました。寄付が必要な時も、お寺の意向のもと、地域が金額を決めていたのです。
 そうすると、地域の中で調整機能が働くため、極端な金額になることがありません。ある程度、納得できる金額に落ちつくのが大部分でした。
 檀家制度というのは、こうした地域コミュニティの上に乗っかっている制度だったのです。
 こうした地域コミュニティは、既に崩壊しています。コミュニティはあるものの、こうした調整機能を果たす力はありません。
 地域の調整機能が働かなくなっていることに、お寺はしばらく気づかなかったようです。しかし最近になって、ようやくこの現実に気づき始め、その結果、檀家制度が変わりつつあると言うことです。
 もちろんお寺には、まだまだ昭和や平成の価値観を引きずっているところがあるのは否定できません。改善するべきところはたくさんあります。
 ただ、住職の世代交代はこれからますます進んでいきます。僧侶自身も、以前に比べて、柔軟な考え方をするようになっています。お寺と檀家の関係性は、少しずつだと思いますが、心地よいものに変わっていくのではないかと期待しています。

薄井 秀夫

薄井 秀夫(うすい ひでお)

プロフィール
昭和41年、群馬県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業。
中外日報社等を経て、平成19年に株式会社寺院デザインを設立。
お寺のコンサルティング会社である寺院デザインでは、お寺の運営コンサルティング、運営相談を始め、永代供養墓の運営コンサルティング、お寺のエンディングサポート(生前契約、後見、身元引受等)、お寺のメディアのサポートなどを行っている。
葬式仏教や終活といった視点でお寺を再評価し、これからのお寺のあり方について提言していくため、現代社会と仏教に関心の高い僧侶らとともに「葬式仏教価値向上委員会」を組織して、寺院のあり方について議論を続けている。
また、お寺がおひとり様の弔いを支援する「弔い委任」を支援する日本弔い委任協会の代表も務めている。

  • 更新日時:2024年03月27日|カテゴリー:ブログ
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