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連載:葬送と仏教を考える──日本人にとっての仏教

お釈迦さまが説いた教え

 仏教とは、お釈迦さまが説いた教えを元にした宗教である。
 多くの日本人はそう考えている。
 ちなみに『広辞苑』では、
①仏陀の説いた教え。経典。
②世界的大宗教の一。前五世紀の初めにインドのガンジス川中流地方に興った。(後略)
とある。
 書店に行って仏教書コーナーに行けば、お釈迦さまの教えの解説を中心に、親鸞聖人や道元禅師などといった日本の祖師方の説いた教えについて書かれたものが多い。そうした教えを、現代人の生活の中で活かすための啓蒙書も少なくない。
 仏教は、生きるための教えであり、生活の指針であるというのは、ほぼ全ての日本人の共通認識であろう。
 その一方で、日本人にとって仏教の教えというのは、あまり馴染みがないのも事実である。釈迦が説いた、縁起、四聖諦、八正道などについて、その意味をきちんと理解している人はどれだけいるだろう。仏教の基本的な考えである、一切皆苦、諸行無常、諸法無我、涅槃寂静など、言葉すら知らない人が大部分である。
 こうした仏教のキーワードは、高校の倫理や世界史の授業で触れてはいる。ほとんどの人は、聞いたことくらいはあるはずである。
 しかし、高校を卒業してしばらくしてしまえば、記憶の片隅からも無くなってしまう。
 そして日々の生活に悩んだとしても、仏教の教えに救いを求めようと考える人すら少ないのだ。

葬送は仏教じゃ無い?

 ほとんどの日本人は、仏教の教えに興味は無い。
 しかし実際は、別の形で、仏教と馴染んでいる人は多い。
 それは葬送である。
 一般の人にとって、仏教とは葬送である。
 家族が亡くなれば、ほとんどの人は仏教で葬儀を行う。遺骨を納めるのは、お寺の境内にあるお墓である。そして、一周忌や三回忌でも、僧侶にお願いをしてお経を読んでもらう。
 葬儀では手をあわせて、故人があの世で安らかで過ごせることを祈り、お墓の前では、故人を想うと同時に、遺された者を見守ってくれることを祈る。
 難しい教えのことは知らないけれど、仏教という宗教を通して、死者を想い、死者と語り合うことで、日々の安らぎを得ているのも事実である。
 それなのに、葬送は仏教であると、唱える人は少ない。書店に行っても、葬送を仏教の信仰として解説している書籍はほとんど無い。いや全く無いと言ってもいいだろう。
 それは、現代において、「仏教は教え」だと考えられており、「葬送は一応、仏教が担っているけど、ほんとうは仏教じゃ無い」と考えられていることが大きい。

死者への優しさに満ちた信仰

 確かに歴史的に見れば、お釈迦さまは葬送について、ほとんど触れていないし、親鸞や道元など日本の祖師方もほとんど触れていない。
 中には、仏教が葬送に携わることは、仏教の堕落だと考えている人もいるくらいだ。仏教のことを良く知っている知識人にその傾向が強い。僧侶の中でもそうした考えを持っている人は少なくない。
 しかし、よく考えてみると、仏教による葬送を望んでいるのは、一般の人である。もし仏教が、「葬送は仏教じゃ無いので、今日から葬送には携わりません」と言い始めたらどうだろうか。
 ほとんどの人は、仏教に失望するだろう。「なぜ死者を弔ってくらないのか?」と。
 むしろ葬送において、仏教は求められているのだ。
 もちろん現代では仏教に対する批判があるのも事実だ。
 しかしそれは、葬送をめぐるお金の問題への批判だ。仏教が葬送に携わることそのものへの批判では無い。
 日本人にとって葬送は、死者の安らぎを祈ること、死者に私たちを見守ってもらうこと、そして死者とずっとつながっていたいという思いを叶えることである。それは死者への優しさに満ちた信仰であり、日々を幸せに暮らしていきたいと思う切なる祈りである。
 信仰は理屈ではない。
 現代日本の仏教理解は、あまりもインテリ視点過ぎないだろうか。

日々、手をあわせるということ

 私は、仏教書をたくさん読んで仏教に詳しい人が、必ずしも深い信仰を持っているとは思っていない。
 むしろ、仏教の教えについてはほとんど知らないけれど、毎日、仏壇に手をあわせている、おじいちゃんやおばあちゃんのほうが、よっぽど深い信仰を持っていると思う。
 我々は、そうした素朴な信仰をもっともっと評価し、大切にしていくべきだと思う。知的過ぎる仏教理解は、人々を仏教から遠ざけるのだ。
 我々は、葬儀や法事を行い、お墓参りを行うという信仰に、もっと自信を持つべきなのだ。

薄井 秀夫

薄井 秀夫(うすい ひでお)

プロフィール
昭和41年、群馬県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業。
中外日報社等を経て、平成19年に株式会社寺院デザインを設立。
お寺のコンサルティング会社である寺院デザインでは、お寺の運営コンサルティング、運営相談を始め、永代供養墓の運営コンサルティング、お寺のエンディングサポート(生前契約、後見、身元引受等)、お寺のメディアのサポートなどを行っている。
葬式仏教や終活といった視点でお寺を再評価し、これからのお寺のあり方について提言していくため、現代社会と仏教に関心の高い僧侶らとともに「葬式仏教価値向上委員会」を組織して、寺院のあり方について議論を続けている。
また、お寺がおひとり様の弔いを支援する「弔い委任」を支援する日本弔い委任協会の代表も務めている。

  • 更新日時:2024年01月31日|カテゴリー:ブログ
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