経済産業大臣認可の全日本葬祭業協同組合連合会(創立から69年)に加盟する、安心と信頼の全国1,221社以上から地域密着の葬儀社検索サイト ※2024年3月現在

第7回 「遺体」

「遺体」という映画をご覧になったでしょうか。「遺体―震災、津波の果てに」(石井光太著、新潮社)が原作で、東日本大震災で被災し亡くなった方々とそのご遺族、そしてご遺体を何とか遺族のもとに届けようと尽力する方々の様子を克明に描いています。
主演は西田敏行。相葉常夫として、葬儀関係の仕事を退職してから民生委員として町の人々に尽くしている役を演じています。
町では多くの人が津波で亡くなってしまいました。家は流されていますし、火葬場は震災で壊れて使えません。そのため、遺体を安置する場所が急遽必要となり、廃校となった中学校の体育館がその場所として指定されます。体育館に次々と運び込まれる遺体、肉親を探し求める人々、愛する人の変わり果てた姿に呆然とする家族。言葉になりません。

そこに偶然行き着いた相葉は、悲惨な状況を目撃し心が折れそうになりますが、少しでも人のために役立ちたいと考え、ここで働くことを志願します。
遺体安置所で働く人の多くは市の職員。ご遺体に触れる機会がほとんどなかったので戸惑いが隠せません。辛さのあまり、直視できない人も出てきます。しかし、相葉は葬儀関係の仕事の知識と経験を生かし、遺体安置所をきれいにし、ご遺体に優しく話しかけ、悲嘆にくれる遺族と共に時を過ごします。その姿は多くの人の胸を打ち、今までどうしてよいか分からないでいた人たちも相葉と同じような活動を始め、その結果として遺体安置所全体が落ち着きを取り戻し始めます。

印象的だった場面が3つありました。一つは死後硬直が始まった遺体をどう扱えばよいか分からないでいた人たちに対して、稲葉がご遺体の筋肉をほぐしながら少しずつ関節を曲げて両腕を胸の前で組めるようにした場面。もう一つは、亡くなった母親の顔が辛そうだと案じる娘さんに対し、稲葉が一緒になって死化粧をする場面。三つ目は、死後に指が浮腫んで指輪が外せなくなり困っているご遺族に対し、稲葉が石鹸を指につけて滑らしながらとる場面です。

いずれの場面でも、ご遺体に優しく話しかけながら行う稲葉の姿は美しいものでした。また、話しかけられた遺体は優しい表情になっていたのも印象的でした。

この映画を見て、私が今まで看取ってきたご遺体に対してこれほどまでに配慮をしていたかと考えると反省すべき点が多くあります。ご遺体に対する細かい気遣いがご遺族に与える安心感は非常に大きいと改めて実感しました。

 

埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科 大西秀樹

葬祭サービスガイドライン
お葬式の知識
お葬式事前・事後の流れ
MY葬儀の準備
葬儀で失敗しないために
葬儀の役割とは?