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第5回 「詮索」

このコラムで、ご遺族は愛する人を失った結果、とても辛い思いをしていることを繰り返し述べてきました。ご遺族には心身両面の援助があってしかるべきです。しかし、遺族ケアが十分に普及していない現在では、周囲の人の無知や無関心な言動で傷ついてしまうことも少なくありません。

今回は、愛する人を失って悲しみに暮れる遺族に対し、周囲の人が死の原因を探ろうとする行為である「詮索」について説明したいと思います。

今まで、ご遺族より以下のような被害の訴えを聞いてきました。

「がん家系なの?」、「検診いかなかったの?」、「食べ物に気をつけてたの?」、「どうして気づかなかったの?」

いずれの言葉も、何の援助にもなっていません。自分の興味・関心を満足されるため遺族にわざわざ聞いているだけです。この人たちは、少し考えれば援助になっていないことがわかるはずでしょうが、きっと何も考えていないのでしょう。傷ついた心をさらに広げてしまうような質問を受け、かつこれに答えなければならないご遺族の心情を考えるとやるせない気持ちになります。

多くのご遺族がこれら「詮索」で悩んでいます。ご遺族によっては、何回も詮索されてしまった結果、また聞かれるのではないかと心配になり、近所づきあいや外出を控え、結果として社会的な引きこもりになってしまうこともありました。

「詮索」によって被害を受けるのはご遺族ばかりではありません。医療従事者がご遺族のケアを一生懸命行って、少し気分が上向いたかなと思うところでこのような事があると、数か月分のケアが台無しになってしまうこともあります。「詮索」は、それほど強い負の影響を持っているのです。

「詮索」からご遺族を守らなければなりません。ご遺族に対しては、これらの「詮索」に対してまともに答える必要は全くない事、このような不躾な質問を何回するような人には距離を取った方がよいと説明しています。

遺族の心の傷に塩を塗るような行為である「詮索」は、個人の問題なのでしょうか。私は個人の問題だけではなく、社会が遺族に対する対応の仕方を学んでいないことも関連していると考えています。なぜなら不躾な質問のベースには無知・無関心関係しているためです。教育が行き届けば、このような行為をする人はなくならないにしても、少なくなると考えています。しかし、このような教育の発信ができる場所は限られています。遺族のケアに携わる皆様と医療従事者が遺族ケアを広めないと「詮索」による犠牲者はまだまだ出てきます。社会に対する遺族ケアの普及は急務だと実感しています。

 

埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科 大西秀樹

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