経済産業大臣認可の全日本葬祭業協同組合連合会(創立から67年)に加盟する、安心と信頼の全国1,268社以上から地域密着の葬儀社検索サイト ※2022年1月現在

連載:仏教と葬送を考える-なぜ葬儀にお坊さんを呼ぶのか?

葬儀の役割
 
 葬儀は何のために行うのか?
 人が死んだら葬儀を行うのは、当たり前すぎて、あらためて聞くまでも無いだろうと感じる人が多いと思います。
 ただ、いざ「何のため?」と聞かれると、すぐに答えられる人は少ないと思います。
 葬祭ディレクターという資格があります。
 葬祭業界に働く人にとって必要な知識や技能のレベルを審査・認定する制度で、全日本葬祭業協同組合連合会等の業界団体が中心となり設立した葬祭ディレクター技能審査協会が認定する資格です。
 この葬祭ディレクターを取得するための教科書である『葬儀概論』という書籍があります。
 この『葬儀概論』には、「葬儀はなぜするのか?」という項目があり、そこに葬儀の5つの役割が挙げられています。
1:社会的な処理(社会的な役割)
2:遺体の処理(物理的役割)
3:霊の処理(文化・宗教的役割)
4:悲嘆の処理(心理的役割)
5:さまざまな感情の処理(社会心理的な役割)
 簡単に解説すると、社会的な処理というのは、人の死をその人が属する社会に対して周知し、受容してもらうということです。
 遺体の処理は、文字通り遺体を火葬するということ、霊の処理は、故人の霊をあの世に無事送りとどけるということです。
 悲嘆の処理は、遺族の悲しみをケアする役割です。そしてさまざまな感情の処理は、家族の死における悲しみ以外の感情、例えば遺体が腐ることへの恐怖、死がもたらす不吉なことへの恐怖などをやわらげる役割です。
 『葬儀概論』では、これらが並列に述べられていますが、個人的には、遺体の処理と霊の処理の2つが柱で、他の三つは付加価値的な役割だと考えています。
 仮に、人間というものは身体と魂で出来ていると考えた場合、人が死んだら、遺体と霊に対して、何らかの処置をしなければなりません。
 それが火葬であり、宗教的儀式としての葬儀であるのです。
 
あなたは焼香の時に何を思い浮かべるか?
 
 皆さんは、葬儀で焼香をする時、故人と向きあって、何を思い浮かべるでしょうか?
 ほとんどの人が思い浮かべるのは、故人の安らぎを祈る気持ちと感謝の気持ちだと思います。
 「あの世で安らかでいてください」「今までありがとう」ということです。
 特に故人の安らぎを祈る気持ちは、日本人の葬送文化の根底をなす思いであります。葬儀の時だけで無く、法事の時も、仏壇の前でも、お墓の前でも、手を合わせると「安らかでいてください」という思いが湧き出てきます。誰に教えられたわけでもなく、それが私たち日本人に染みついた信仰です。
 
なぜ葬儀にお坊さんを呼ぶのか?
 
 それでは、もうひとつ、質問です。
 お葬式でお坊さんを呼びますが(仏教の場合)、なぜお坊さんを呼ぶのでしょうか?
 もちろん、儀式をやってもらうためです。
 でも考えてください。最近は、無宗教で葬儀をする人もいます。無宗教でも葬儀はできるのです。
 まして日本人のほとんどは、自分が仏教徒であるとは思っていません。それなのに、なぜ、あえてお坊さんを呼ぶのでしょうか?
 それはお坊さんが、私たちには出来ない何かをしてくれるからです。出来ない何か、とは、故人を無事あの世に送り、安らかにしてくれるということです。お坊さんにはそうした能力があると、私たちは心のどこかで信じているからこそ、わざわざお坊さんを呼んでいるのです。
 もちろん、明確にそれを自覚している人は少ないでしょう。ほとんどは、「そういうものだから」「理由はわからないけど、お坊さんがいないと落ち着かないから」ということだと思います。
 でも、「落ち着かない」理由は、そうしないと故人が安らかになれない可能性があるんじゃないかと、心のどこかで思っているからだと思います。お坊さんには、故人を無事あの世に送ることのできる、特別な能力があると無意識に信じているのです。
 私たちは、葬儀をやってくれたお坊さんには、お布施を包みます。そしてほとんどの場合、お布施はそれなりの金額を包むことになります。
 単に儀式を進行してくれるだけだったら、それだけのお布施を包む人はいないでしょう。やはり、我々一般の人間にはできない特別なことをしてくれるからこそ、お布施を包むのです。
 
おぼろげで曖昧な信仰
 
人が死んだら、葬儀をすることによって、無事、あの世に送らなければならない。
僧侶がお経を読んでくれることで、故人は無事あの世に行くことができる。
私たちが手をあわせて祈ることでも、故人はあの世で安らかになることができる。
 
 これが、葬儀と仏教をめぐる日本人の信仰です。ほとんどの場合、明確に意識されているわけではなく、おぼろげで曖昧に考えている信仰ではあります。それでも、身近な人が死んだ時には、必ず湧き起こってくる信仰です。現代のような科学合理主義の時代であっても、根強く信じ続けられているのです。
 
薄井秀夫
 
薄井 秀夫(うすい ひでお)
プロフィール
昭和41年、群馬県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業。
中外日報社等を経て、平成19年に株式会社寺院デザインを設立。
お寺のコンサルティング会社である寺院デザインでは、お寺の運営コンサルティング、運営相談を始め、永代供養墓の運営コンサルティング、お寺のエンディングサポート(生前契約、後見、身元引受等)、お寺のメディアのサポートなどを行っている。
葬式仏教や終活といった視点でお寺を再評価し、これからのお寺のあり方について提言していくため、現代社会と仏教に関心の高い僧侶らとともに「葬式仏教価値向上委員会」を組織して、寺院のあり方について議論を続けている。
また、お寺がおひとり様の弔いを支援する「弔い委任」を支援する日本弔い委任協会の代表も務めている。

  • 更新日時:2022年05月6日|カテゴリー:ブログ
葬祭サービスガイドライン
お葬式の知識
お葬式事前・事後の流れ
MY葬儀の準備
葬儀で失敗しないために
葬儀の役割とは?