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連載:墓じまいと供養──家意識の変化と少子化

増える墓じまい

 「墓じまい」という言葉を聞いたことのある人は少なくないと思います。
 先祖代々のお墓、あるいは、両親や祖父母のお墓を、撤去してしまう(しまってしまう)ことを言います。
 朝日新聞の報道によると、
「供養の方法を見直し、墓石を撤去する「墓じまい」(改葬)が2022年度、全国で15万1076件(前年度比3万2101件増)に上り、過去最多となったことがわかった」(2023年12月22日)
とあり、近年、墓じまいが急速に増えているのは間違い無いようです。

2つの墓じまい

 墓じまいとひと言で言いますが、実は墓じまいには、全く性質のことなる二つの墓じまいがあります。
 ひとつは、子どもがいない、あるいは、子どもが娘しかいない、つまり自家のお墓を継いでくれる人がいない状況の人が選択する墓じまいです。
 この場合は、納めてある遺骨を永代供養墓に移すなどした上で、墓石を撤去することになります。つまり、自家のお墓は完全に無くしてしまう墓じまいです。
 もうひとつは、お墓が遠方にあるため、そのお墓を撤去し、現在住んでいる場所の近くのお墓を建てて、遺骨をそこに移すという墓じまいです。
 この場合、実家近くのお墓は完全に撤去してしまうものの、住んでいる場所の近くに新しいお墓を建立するので、「お墓のお引っ越し」と言ってもいいかもしれません。
 この二つの墓じまい、それぞれ事情が異なるものの、現代人にとっては、やむを得ない行動でもあります。

お墓は「○○家」のもの

 日本のお墓は、「家」というものと深い関係を持ってきました。
 お墓は「○○家」のものであるということです。特に明治以降は、「家を守る」という考え方が当たり前のように受け入れられてきました。
 長男がその家を継ぎ、さらにその長男が家を継ぐことで、家は守られてきたのです。家を守るためには、男子を産むことが大切でした。また家を継ぐ男子は、職業も継ぐのが当たり前ですし、住宅としての家も相続してきました。
 そもそも法律的にも、家の財産は長男がすべて継ぐものであり、他の兄弟は相続することはできなかったのです。
 そして「家を継ぐ」人が、お墓も継いできたのです。
 お墓は、こうした「家を継ぐ」「家を守る」という考えが前提にあって、受け継がれてきたのです。

お墓を継ぐ人がいない時代

 戦後、長男がすべてを相続するという法律は無くなりました。
 さらに団塊の世代以降には少子化が始まり、現在、その頃の子ども達が50歳、60歳となってきました。つまり、少子化が始まった時代に生まれた子どもが、家を継ぐ世代になってきているのです。
 現代では、継ぐべき子どもがいない家、あるいは、継ぐべき男子がいない家に世代交代が訪れているのです。
 ただ家を継ぐ人がいないということは、以前でしたら大問題ですが、現代においてはさほど問題ではありません。現代では、家を継ぐという考え自体があまり無いからです。
 そして家を継ぐ人がいないということは、お墓を継ぐ人もいないということです。
 家は概念に過ぎませんが、お墓は実際に存在しているものです。そして、お墓の中には遺骨も存在しています。
 継ぐ人がいないと、お墓も遺骨もないがしろになってしまうのです。墓じまいの必要性は、こうして生まれたのです。

墓じまいをする人はむしろ先祖を大切にしている

 墓じまいは、こうした社会の変化の中で生まれてきています。
 現代のような社会では、どうしても、墓じまいせざるを得ない人がいるということです。
 これは、跡継ぎを前提とした、これまでのお墓というシステムが、現代社会にあわなくなっていることを意味します。近年、永代供養墓などの、承継者を前提としないお墓を求める人が増えていることも、そうした社会背景を映しています。
 私は墓じまいする人は、むしろお墓や先祖を大切にしている人だと考えています。放っておくと、お墓や先祖がないがしろになってしまうと思い、それを避けるために墓じまいを決意しているのではないでしょうか。
 家を前提としたお墓のシステムは、もはや現代社会にはあわなくなっています。墓じまいが増えることもそうですが、供養のあり方もまだまだ変化していくと思います。

薄井 秀夫

薄井 秀夫(うすい ひでお)

プロフィール
昭和41年、群馬県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業。
中外日報社等を経て、平成19年に株式会社寺院デザインを設立。
お寺のコンサルティング会社である寺院デザインでは、お寺の運営コンサルティング、運営相談を始め、永代供養墓の運営コンサルティング、お寺のエンディングサポート(生前契約、後見、身元引受等)、お寺のメディアのサポートなどを行っている。
葬式仏教や終活といった視点でお寺を再評価し、これからのお寺のあり方について提言していくため、現代社会と仏教に関心の高い僧侶らとともに「葬式仏教価値向上委員会」を組織して、寺院のあり方について議論を続けている。
また、お寺がおひとり様の弔いを支援する「弔い委任」を支援する日本弔い委任協会の代表も務めている。

  • 更新日時:2024年05月2日|カテゴリー:ブログ
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